☆錫粒子をタンク外で抽出する

あるヤフオク購入者の方が、振動モーターによる錫粒子抽出と燃料への添加のレポートを公開しておられます。ZX-9R ファイアーストーム アルテッツァ乗りの独り言 錫粒子抽出ページ
実は、エンジンオイルに添加するタイプのモータロイ(「インスタント・モータロイ」とかいったはず)を使ってみた頃(1980年代初頭)から、錫棒などから錫のパウダーを作って燃料に添加する方法の思索は繰り返してきたのですが、
@有効に作用する径の粒子確保は?
A適正な使用量は?
というあたりで出口が見えないため、試行に及ばないままボツ…を繰り返してきました。
今回、上記リンクの記事に刺激され、改めて過去三十余年の思索を振り返ってみたのですが、エンドユーザーが錫粒子を作るための現実的な方法は、
T、微振動法…振動モーター等で、錫粒同士または混入した鉄片や鉄容器との間で微振動接触させ、磨耗粒子を得る。
U、強振動法改め シェイク法…溶媒と一緒に容器に入れて人力シェイクする方法。容器にもよりますが、本気で強振すると悲惨なことに…
V、研磨法改め 手摺り法…ステンレスのバット等に溶媒をたらし、桃太郎鋳を軽く擦りつけて磨耗粒子を得る(Yahoo!オークションの質問への回答でご提案した方法)。
の三通りになります。
T(微振動法)の長所は粒子抽出の段階で体力がほとんど要らず、装置側がOKなら一晩かけてでもじっくり抽出できることなのですが、短所としては、@振動モーターを得るために費用がかかる、A振動モーターの耐久性、B長時間駆動する際の安全性、Cそもそも電気や機械に詳しい、工作能力のある人にしか試行できない、という問題があります。
それで、当サイトでは、桃太郎鋳を購入した方々、或いは別口、錫素材を購入した方々が、誰でも手軽に且つ安全に実行できる方法、という見地から、主にUとVに絞って、実用的な錫粒子抽出法を模索してみます。

シェイク法…@成功例

@まずは、とりあえず成功例
コーナンの工具コーナーで100tの樹脂容器をゲット。PETとポリエチレンの二種だが、画像はPETの容器。中の様子がよく見えるだろう…と
PETの容器でシェイク法を試行(♫行きは良い良い 帰りは怖い〜♪…これで後に悲惨なメに)。



身を削らせる桃太郎鋳は、研磨前のものを四個…身を粉にして、しっかりご奉公するんやで!



浸る程度にコーナン水抜剤(プロスタッフのOEM?)を加えます。この後、優しく振る(というよりグルグル回してかき混ぜる)うちに、キラキラ光るものが
泳ぐようになりましたが、これでは能率は良くないな…(予想通り)。



適当なボルトが手元に無かったので、磨耗促進子としてキレイなM5のナットを10個入れて、再びグルグルジャカジャカ…お、これはイケそう!
調子に乗って約20分ほどグルグルジャカジャカするとこんな感じ。



錫粒子を含んだ水抜剤をポリエチレン容器に移し、中の桃太郎鋳を取り出してみると、鋳型の合わせ目などキレイに無くなっています。
でも、ナットの角の当たりがキツすぎるみたいで、ちょっとかわいそう。



A酷いメにあった失敗例 (T T)
シメシメ、次は、錫粒だけでしっかり振ってみよう…と思った私がバカでした。
ジャカジャカジャカジャカ…8月9日〜13日まで五夜連続、 NHK・BS2で特集放送された「全駅停車!銀河鉄道999」で観た、タケカワユキヒデのモゲた
唄を思い出して、♫さあ行くんだ ♫その顔を上げて〜〜♫と、振り方がエスカレートして銀河超特急クラスになったところで突然、ぷしゃ〜〜〜〜ギャオ〜、メ・メ・目が…眼が…
痛くて痛くて自力では開けられぬ瞼を指でこじ開けて両目のコンタクトレンズを外しながら、蛇口にたどり着いて眼をゆすごうとするが、水道水が粘膜に
滲みて痛いのなんの(T T)。Oh my God! ミラノを見てから死なせてくらは〜い!(「ナポリを見て死ね」の間違い。ホンマにパニクりましたわ、ゴダイゴの祟りかと…) 
結局、まともに水抜剤の飛沫をかぶったらしい右目は、コンタクトレンズを外すまでの僅かな時間、水抜剤混じりの涙に浸ってしまったらしい下瞼の
ラインから下の白眼が翌日まで少し充血していましたが、どちらの目にも後遺症はなく、ハードのコンタクトレンズ(メニコンEX)も無事でした。
↓画像右を下にして、底に当てていた指を離して激しく振った時、底が割れてIPAをアタマからかぶったのでした。底を突き破ったらしい桃太郎鋳君は
その際に出奔してしまいましたが、行方を捜索する気力も湧きませぬ。これからは自由に生きていいからね、恨まんといてや!



PET容器に残った桃太郎鋳三個。ホレボレするほど艶やかな肌になっているのですが、激しく振りすぎたためか、桃太郎鋳同士当たったところが微妙
に凹んで、ゴルフボールのディンプルみたいになっています。ああいう振り方は、やはりよろしくないようです(ハンセイ)。




手摺り法 @…基本形
そこで取り出しますのがダイソーで買っておいたステンレス・バット、ヘアーライン仕上げのものです。
水抜剤を少々入れ、桃太郎鋳を一個、指でつまんで軽くグルグルと回して摺ります。力を入れて押しつけてはなりませぬ。
飽くまでも、優しく、巧みに、情熱的に…水抜剤が少しずつ濁ってゆき、錫粒子が溶媒の中へ旅立ってゆきます
…♫さあ行くんだ ♫その顔を上げて〜〜♫新しい風に 心を洗おう〜〜今度こそ…



数分間、軽く摺って、水抜剤を足してポリエチレン容器に移すとこうなりました。裏返した桃太郎鋳の底面周囲はキレイにすり減って、微粒子になって
溶媒を濁らせています。ステンレス・バットの側にも、ヘアーラインの一部に錫がくっついているらしき光沢が見受けられます。




翌朝も、ポリエチレン容器の中の錫溶液は上の画像とほぼ同じ状態でした。




翌々日の朝の状態です。



容器を倒してみると、底には大きな粒子の沈殿があります。



この沈殿する粒子は燃料フィルターで濾過されてしまうので四輪車の燃料タンクに入れても問題はありません。というより、給油の際に結構ゴミもホコ
リも入っています。見かけ上、派手に濁っていても、燃焼室に到達して効果を発揮するのは、上澄みの中の小径粒子だけです。その部分の割合を増
やすことがモータロイの永遠の課題です。






シェイク法 BPPシェイカー

攪拌容器に使えそうなシェイカーをダイソーで見つけました。注ぎ口の内側がパンチングメタル状になっている、安いのに本格的な作りのシェイカーで
す(もちろん、左側)。桃太郎鋳をシェイクするには少し大きすぎるサイズなのですが。



磨耗促進子として、新たに二種類を試してみます。



M6-20oの鍋頭ネジから試します。控えめに二本投入。出奔した桃太郎鋳君の代わりに一個追加して、15型仕様混在合計四個で踊らせてみます。



数分間シェイクしてみましたが、粒子の溶けだしがイマイチなのでネジの残り三本を加えて更にシェイクすること数分間、合計十余分間シェイクした結
果です。容器が大きすぎて接触の頻度が低いためか、溶媒の濁りがもう一つです。



取り出した桃太郎鋳15型



M8のイモネジ5個に入れ換えます。正直なところ、こっちが本命なのです。



シェイクすること数分間、やはりイモネジの方が効いています。約10分間シェイクした状態。



約20分シェイクした状態。太陽が雲から出たり入ったりして、画像では違いがよく分からないのですが、いいあんばいに濁っています。



取り出した桃太郎鋳15型…そろそろ個体の識別が難しくなってきました。





手摺り法 A…水炊き法(?)

手摺り法(基本形)の欠点は、摺っている間に溶媒が蒸発するため、IPA(イソ・プロピル・アルコール)が主成分の水抜剤を使うと激しくクサいことで、
とても室内では実施できません(換気の良い環境で実施しないと気分が悪くなったりするし、引火の危険が伴う)。それを見越して、オークションの質
問に対しては2スト用オイルを使うようご提案したのですが、それはそれで、ベトベトして、扱いにくい面があります。
水抜剤も2ストオイルも、そのまま薄めて容器に保管すると共に、計量して燃料に混入するのに適した溶媒なのですが、桃太郎鋳と一緒に希望者に
安くお分けすることまで考えると、ちょっと問題があります。どちらも可燃物であるため、安易に郵送できないのです。
では、郵送に適した不燃物なる金属錫の粉末にするために溶媒を一旦飛ばしてしまう、という前提で考えれば、他には何も必要ありません、溶媒は
H2Oでキマリです。
水はアルコールほど蒸発するものではないので、墨を摺るように納得ゆくまで錫を摺ることができます。錫の融点は232℃なので弱火のガスコンロで
軽く沸騰させて水分を飛ばせば、錫パウダーが出来上がるはずです。
自分にとっては、この水炊き法(?)が本命になりそうな予感がして、使えそうなステンレスの食器類をダイソーで集めてきました。
が、うまくゆきませんでした(T T)

基本形で摺った桃太郎鋳を表裏とも平面になるまで摺って、もう一個両面を半分くらい摺って、錫粒子を水で薄めてスポイトでステンレスの計量カップ
に移し、トロ火で沸騰するかしないかの状態で熱するうち水は蒸発したのですが、できあがった錫粒子は容器の内側に塗膜状に張りついたままで、
叩いても全く落ちてきません。こそげ落としてみましたが、微妙に粘って、粉末にはなりません。
水抜剤を加えて振ってみるとそれなりに溶けはしますが、水炊き法ではなぜか錫粒子が乾いた粉末にならないようです。溶媒に使った「紀伊山系の
天然水」が相性が悪かったのかな…今度は「六甲のおいしい水」で試してみようか…しかし失業中の身とはいえ、延べ半日、錫を摺り続けて得た錫
粉末がこれでは…気分が萎えてしまいます。



錫粒子重量計測
精密デジタルスケールが届いたので、水炊き法で作った錫粉の重量を量ってみます。



0.06gと出ました。元祖モータロイの「試験所実験データー」では「2,000q走行による減耗は0.0115g」となっているので、約一万q走行分の量ということになります。
ただ、試験車両の詳細が全く不明(モータロイの重量からは二個一組のbOと推定される)なので、4気筒乗用車で1万q0.1gと覚えておきましょう。





シェイク法C…桃太郎鋳10型
 乗用車の逆流防止弁を完全にクリアする、φ10錫球加工の新型が加わりました。それで便宜上、旧来の桃太郎鋳を15型と呼ぶことにします(φ15錫
球の加工品だから)。
 10型の問題点は、小径であるため鋳口の切断残りや、鋳型合わせ目のハミ出しが激しいことです。左は15型、右の5個が10型。
 また、10型は小さすぎて指先でつまんで摺ることは困難なので手摺り法は諦め、シェイク法に絞って試行します。



15型で使った100tの容器より一回り小さな60tのポリ容器に、M5のナット5個と一緒に入れます。



こんな風に持って、グルグル中身を回すように動かすのが基本です。



錫粒のサイズが小さいためか、予想通り15型に比べて溶媒が濁ってゆくペースが遅いです。十分余りグルグル回してこんな感じになります。



取り出してみると、やはりナットの角が当たったらしい傷が多く見受けられます。



15型&シェイカーで使ったイモネジを試します。桃太郎鋳10型とイモネジ5個を60tの容器に入れます。



約10分シェイクした状態。



約20分後、いいあんばいの錫粒子抽出液になりました。



取り出した桃太郎鋳10型とイモネジです。





シェイク法D…ガソリン携行缶
 燃料タンクやその手前の金属パイプ内での桃太郎鋳の磨耗を検証したくなって適当な容器を探していたら、600tのガソリン携行缶を見つけました
(鴨方ナフコで特価\970-)。
 先ずは桃太郎鋳だけで磨耗促進子を入れずにシェイクしてみます。後で画像が出ますが、入っているのは15型4単位+10型4単位です。



 こんなふうに持ち、手首を支点に底の錫粒が内面周囲を転がるよう小刻みに回すように振ります。中身がしっかり回りだすと必要な力は小さいものになりますが、ポリエチレン容器に比べて相当重いため、すぐ手首がギブアップしてしまいます。



 結局こんな持ち方に変え、手首が疲れたら腕で、そしてまた手首で…と両腕の全筋肉を順番に使って、やっと10分間振りました。



 計量カップにあけて見ると、いいあんばいです。IPAと桃太郎鋳を携行缶に戻し、もう10分間振ってやります。



 通算約20分間シェイクした錫粒子抽出液です。大きな破片が計量カップ内壁に付着していたりしますが、亜鉛メッキ鋼板製の容器+桃太郎鋳単独でも
ポリエチレン容器+磨耗促進子でシェイクするのとほぼ同じ錫粒子が発生することが検証できました。この光って見える粒子が有効なものなのか気に
なりますが、この状態で置くとすぐ日向側の粒子が上昇を始めます。直射日光の輻射熱による対流が発生するためです。



 で、今回の目玉がこれ、桃太郎鋳の磨耗重量測定です。シェイク後に拭いて計測すると79.99g。
 シェイク前は80.12gだったので差し引き0.13gが約20分間シェイクによる磨耗量ということになります。1〜2万q走行分の量です。


仕 様 シェイク前重量(g) シェイク後重量(g) 差引重量(g)
10型4単位(8個) 28.69 28.63 0.06
15型4単位(4個) 51.43 51.36 0.07
合 計 80.12 79.99 0.13

 図らずも10型二個と15型一個の減少重量(≒錫粒子発生量)が拮抗する結果になりました。
 これだけの検証ではまだまだ不十分なのですが、少なくとも、10型は小さすぎて…という心配が無用であることをお分かりいただけると思います。
 乗用車には、10型をお勧めします。






今までのシェイク法の試行から、およそ以下の傾向が明らかになりました。

@ポリエチレン容器で錫粒だけをシェイクしたのでは有効な粒子を十分に得ることは難しい。
したがって人力シェイクにおいては、ポリエチレン容器+磨耗促進子の組み合わせか、鉄製容器を使うのが現実的である。

A抽出液の状態から目視判断する限りにおいて、有効な粒子の割合(上澄みの濁り具合と沈殿粒子の割合)が良好に感じられるのは
イモネジ>鍋頭ネジ>600t携行缶≒ナット≒手摺り法基本形、の順である。

B粒子抽出の能率は
手摺り基本形>600t携行缶≒イモネジ≧ナット>鍋頭ネジ>>>桃太郎鋳単独、の順である。

C振り方は、グルグルジャカジャカと軽く一定のペースで振る(中身を回す)のが良い。数分で息が上がるような振り方は激しすぎる。
シェイカーでは結合部から上を握って、下3/1の細い部分の中で中身が回るように振る…ねじ込み結合部が緩んで外れないよう注意。
100tや60tのポリエチレン容器は、図示した持ち方で指が疲れたなら、中蓋に親指、底に小指または薬指で持つことになるが、回る中身がジャンプ
しても中蓋に当たらない程度の振り方にとどめるのがよい。
どの容器でも、カクテルをシェイクするように激しく天地方向に振ることは、大きな粒子の割合が増えるため好ましくない。特に15型は一粒当たり
の重量があるため、溶媒の温度上昇による蒸気圧と併せて容器が破裂して痛い目に遭う危険があるのでご注意。

D万一、容器が破損するなどしてIPAが目に入ったら直ちに水でゆすぐことができる場所で行うべき。できれば保護眼鏡を装用する方がよい。
IPAは揮発性で容易に引火するので、火気の近くでは絶対に使わないこと。

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