「MOTALOY」は米国の製造元(1979年頃倒産)の、「モータロイ」は輸入販売元である不二貿易鰍フ登録商標(ケミックス鰍ヘ沖縄県の販売元?)のようですが、「テフロン」などのように、ある種、一般名詞化しています。それゆえ当サイト MOMOTALOY Worldでは、本来のモータロイだけでなく、私製のものも含めて「モータロイ」と括って扱うことがありますのでご理解賜りたく。

 第一次オイルショックを経験した世代にはモータロイの根強いファンが多くいます。効果の疑わしい「省燃費用品」が高値で販売されている(公正取引委員会:自動車の燃費向上等を標ぼうする商品の製造販売業者ら19社に対する排除命令について)中で、珍しく本当に効果のある省燃費用品だったのですが、製造元倒産で供給が絶たれ、流通在庫も払底し、エンドユーザーには入手困難になって久しくなります。
 歴史と実績のある製品であるためネットには多くの有用な資料や玉石混淆のレポートが上がっているのですが、それゆえにまた「モータロイは環境問題で消えた」とか、さらには「モータロイは環境ホルモンになるため消えた」などという都市伝説が多々ヒットしてしまいます。それゆえモータロイ・ファンとして看過に堪えず、ご同輩各位に敬意を表しつつ適宜引用して、考察と補足訂正を加える僣越をお許しくださいませ(以下、長文&無断リンクご容赦)。

元祖モータロイの概要…まずは当時のモータロイの商品説明をご覧ください。その上で
要訂正箇所: 上記資料中、三段目下画像「モータロイによるメタル損傷部分の修復拡大図」は、モータロイブランドの別製品(エンジンオイルに混ぜる錫粉末)の効果を示すもので、写っているのはシリンダー壁ではなくクランクメタルです…一度だけ使ってみたことがあり、そちらの資料にこの画像が使われていたので知っています。
 さらに、モータロイは「(錫の)他に数種類の金属を化学的に合成処理した特殊製品」、つまり合金であるように書かれていますが、ホワイトメタル(軸受けに使われる減摩合金や食器に使われるピューター合金等、錫合金の総称)というほどの意味のある合金とは思えません。
 おそらく(推測)試薬級の純度(3n=99.9%up)に精錬する前の粗製錫(推定98〜99%程度)を鋳型に流し込んだものであるため「純錫」と表記する訳にゆかず、効能に影響しない程度に原鉱由来の不純物(鉛、ビスマス、アンチモン等)(鋳造ロットにより様々に)残っている事実を(意図的に)言い換えて(≒偽って)「特殊製品(合金)」と称したものと考えられます(効能の説明で言及される金属元素が専ら錫だけであることからの推測です…現代なら日本でも不正競争防止法違反等々で問題視されるはずの(事実上の)虚偽表示ですが、当時なら許容されたのでしょうね)。

作用原理…燃料タンクに入れておくと、車体の振動や燃料の揺動、加減速や横Gなどによって燃料タンク底面とこすれて磨耗し大小各種の粒子を燃料中に放出します(砂糖が水に溶けるように化学的に溶解するのではなく、物理的な磨耗によって発生する微粒子が燃料油の中に浮遊分散してゆく現象です)。
 燃料タンク手前に逆流防止弁や盗油防止メッシュなどがあってそれを通過できなくても、滞留するところが鉄パイプ内であるなら運用中に磨耗粒子が発生し給油の際にタンクに移動します。
発生した錫粒子のうち大きなものはタンク底で錫粒本体と離合集散を繰り返しながら小さくなってゆき、中位の粒子は燃料と一緒に吸い上げられたあとフィルターに引っ掛かって止まりますが、もっと小さなコロイド径の粒子が燃料フィルターを通過してエンジンに吸入されてゆき、燃料経路と燃焼室内面、そしてバルブ周りに独特の潤滑皮膜を形成することで、圧縮圧力の回復、回転の円滑・静粛化、そして省燃費効果を発揮します。省燃費の期待値は経験上、数%前後(これが、本当に効果のあるものの特徴的期待値)です。
 しかし上記資料中「(シリンダー壁の)傷を修復する」というのは少々誇大表現で、タンク内での磨耗=重量減少のペースを考えれば、見て判るほどの傷を埋める量の錫が燃料中に溶け出しているとは考えられません。「錫メッキ」とは言ってもそれは原子レベルのごく薄いもの、あるいは相当不完全な(顕微鏡で見れば摺動面の頂上のあちこちに金属スズがくっついている程度の)ものであるはずです。クロームメッキのような鏡面処理を想像した方は幻滅してください(笑)。しかし、それで十分な効果があるのです。

本当の効果=油膜保持…錫メッキの摩擦低減効果は(広義の)極圧潤滑作用の面から説明されるものなのですが、個人的にはむしろスズがオイル分子との馴染みが良いことによる油膜保持作用こそ本当の効果で、(特に上死点付近の)シリンダー壁やバルブシートに必要量のオイルが保持されるようになってピストンリングとバルブの作動が安定し各シリンダーの圧縮圧力が回復・平均して滑らかに回るようになり、燃焼が安定することでカーボンが燃えて減ってゆき、そうした燃焼安定化の副産物として省燃費効果があるのだと思っています。 科学的な検証例…右欄「モータロイ効果測定(旧&新1号機)」の圧縮圧力の変化を実測したグラフが秀逸です。

圧縮圧力回復の原理…シリンダー壁は、必要な油膜を保持できるようにするため、製造時にホーニング処理により傷を入れてクロスハッチを形成し、拡大すれば大小の菱形タイルを敷きつめた壁のような状態に作ってあります(「最近のクルマは慣らし運転が不要」といわれるようになったのはホーニング技術の進歩=プラトーホーニング普及の成果です)。
 ピストンが下がってゆくとき、タイル表面のオイルはピストンリングにかき落とされて目地(溝)の部分に溜まります。ピストンが上がって来るとき、目地のオイルはリングが連れて来たオイルと一緒にタイル表面とピストンリングとの間に引き出されて広がり、リングはオイルの補助によって十分な密封効果を発揮します。
 そのようになってはいても特に上死点付近の潤滑環境は厳しく、トップリング上死点付近のクロスハッチは早々と磨滅が始まります。しかしクロスハッチがすり減って単なる平面に近づいたシリンダー壁にピストンリングが残してゆくオイルは僅かな量に減ると共に、もはや目地の溝に隠れることができないためオイルは燃焼の熱と圧力をもろに受けます。燃焼行程で炭化を免れた油膜は一瞬のうちに凝集して油滴になろうとしますが、その一部は戻ってきたピストンに弾かれて飛散し、蒸し焼きになり粒子状物質になって燃焼室に堆積してゆきます。
 クロスハッチの磨滅が進むにつれ、炭化・凝集・飛散を乗り越えてピストンリングを迎えるオイルは極めて僅かな量に減ってゆき、しかも均等な油膜としてリングにからむことができない領域が広がるため、圧縮行程の最後の詰めの段階でリングの密封作用が不安定になり圧縮圧力が低下してゆきます。
 これが、エンジンの中で常に起きている現象なのであり、新車から数万q走るうちに必ず直面する、圧縮圧力の低下とばらつき、カーボン堆積とオイル消費量増大をもたらす原理なのです。
 一方、柔らかく融点の低い錫の微粒子がシリンダー壁とピストンとの間に入ると、燃焼圧力でリングにキツく押しつけられるときシリンダー壁にこすりつけられて付着します。あちこち点在するようになった金属錫の微小ランドはシリンダー壁に弾かれようとするオイル分子を引き止めて凝集のペースを遅らせます。シリンダー壁の錫ランドが増え密度が高まるにつれて、戻って来たピストンリングはより十分な油膜に迎えられるようになって密封作用を取り戻してゆき、圧縮圧力が回復し揃ってゆくのです。

テフロン・ボロン系パウダーとの併用効果…エンジンオイルに混入するテフロンやボロン(セラミックス)のパウダーの省燃費作用は通常、低い摩擦係数による減摩作用の面から語られますが、本当の効果はオイルがコロイド溶液化してチキソトロピー(チクソトロピー)性を備えることによる、クロスハッチ磨滅領域での油膜保持作用にあります。
 パウダーを混入したオイルはシリンダー壁に塗り広げられた状態では流動性が低下しているため、一瞬、凝集せず均等に広がったまま戻って来るピストンリングを迎えることになります。テフロンパウダーを混入したオイルを入れて始動するとみるみる音が静かになってゆくものですが、それはシリンダー壁のオイルがパウダーを含んだチキソトロピー性オイルに入れ代わってゆくためです。
 つまりテフロン・ボロンのパウダーはモータロイとは別の角度(オイル側の油膜保持能力向上)から似た効果(圧縮圧力回復→静粛化→省燃費)を追求するものという一面があり、それゆえ両者の併用はむしろ効果的です。
 また、ディーゼルエンジンの燃料系統(噴射ポンプ〜噴射ノズル)の潤滑は依然として燃料自身の油性(+残留硫黄分の極圧潤滑作用)に全面的に頼っていますが、燃料の中に錫のコロイド粒子が存在すればこの部分では(広義の)極圧潤滑材として作用し(狭義の「極圧」潤滑域は燃料系統の摺動部には発生しない)、軽油の極低硫黄化でカジリを起こし易くなっている摺動部を保護します。 ガソリンも既に極低硫黄化されていますが、燃料噴射式のガソリンエンジンではインジェクタの摺動面に同じ保護効果を期待できます。
 一方、テフロンはフッ素を、ボロンはホウ酸を熱分解して発生させ、吸入すると気分が悪くなる等ある程度の急性毒性があるため、潤滑目的で燃料に混ぜるのには適していません。つまり、極低硫黄化された燃料を使う現代のエンジンにおいて燃料系統〜気筒上部(バルブ・シリンダー壁上部)に集中作用するモータロイと、潤滑面全般〜気筒上部に効果が及ぶテフロン・ボロン系オイル添加剤とは、相互に補完し合って好ましい相乗効果を発揮します。
 また、テフロン・ボロン系パウダーは、オイル交換の度に新たに混入しなくてはならず、即効性である代わりに切らすと効果が失われてゆきますが、錫と併用している私のクルマはどれも、オイル交換の際にパウダー混入を怠っても次回のオイル交換で再混入するまでの間、エンジンの調子も燃費も、ほとんど低下しません。マイクロロンとの併用例

触媒効果?…燃料系統中の錫粒には、燃料油を改質して燃焼を促進するような触媒作用はありません。ただ、錫管を使うと味がまろやかになるという理由で焼酎の蒸留装置(冷却管)に古くから使われてきたことや、似た理由でビールのジョッキや清酒の盃等の高級食器に使われている実績から推測すれば、感性の次元で何らかの効果を感じる方がいても不思議はありませんし、「水性ガスシフト反応の触媒効果では?」と教えてくださる方もいます。しかしそれでも、常温の燃料(炭化水素)に対する改質効果は化学的に裏付けられているものではありません。
 また、排ガスに出てゆく錫の量は極めて僅かなので、触媒コンバータ等の排ガス浄化装置の作動に影響を及ぼすことは現実にはありません。

使えるエンジン…クルマやバイク、また小型船舶のように、鉄板製の燃料タンクに振動が伝わる構造のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン。農業用発動機や、汎用発動機を搭載した発電機、コンプレッサー、溶接機等。 質問にあった「石油発動機」つまりガソリンで始動・暖機した後、灯油に切り替えて使う古い農業用発動機は、気化器がガソリン・灯油の二系統になっているだけで、本体は主燃料の灯油のオクタン価に合わせた低圧縮比・低回転・低出力仕様のガソリンエンジンそのものなので、主燃料(灯油)タンクに入れて普通に使えます。 コモンレールのディーゼルエンジンは、登場時期の関係かモータロイの使用報告は見当たりません。コモンレールはBDFと相性が悪い(BDFに残存する微細な不純物で燃料フィルターが詰まる?)といいます。錫の微粒子は燃料フィルターを詰まらせるほどの量は無いので、旧来のディーゼル同様に有効なはずなのですが、身近にコモンレールのディーゼル車が無いので検証できていません。

使えない(工夫が必要になる)エンジン…燃料タンクが乳白色のポリエチレン等、軟質プラスチック製のもの(草刈機やチェンソー、小型発電機など)。錫はモース硬度1.5の柔らかい金属ですが、接触する相手が硬度差の小さい柔らかい樹脂では十分な磨耗粒子を放出できません。
 燃料コック下の沈殿槽が鉄製ならその中に10型を入れて使えそうです。沈殿槽が透明な硬質プラスチックでも10型が入れば使えるのでは…バイクのようですが後付け燃料フィルターを改造して仕込む猛者もいます…究極の有鉛対策なるか? 試していませんが、複数個を串刺し状態に通し穴を開け、常に接触するようネジや細いワイヤーで留めて投入すれば、軟質プラスチックやゴム内袋のタンクでも錫粒同士の振動接触で微粒子が発生するはずです…振動モーターによる錫粒子抽出法の応用。
 LPGやLNG、水素など高圧ガスを燃料とするエンジン…タンクからエンジンに至る燃料系統の構造がまるで異なるため、そもそもタンクの中に入れることができません(ガソリンと切り替えて併用する構造なら、ガソリン側には普通に使用できるはず)。
ロータリーエンジンは…購入者の方によれば、13BのFCで元祖モータロイを入れて10万q走って分解してみると「ハウジング内面はツルツルでいぶし銀色のテカリがある状態でした。アペックスも摩耗が低く、あと5万はOH必要なかった…と言われ」たそうで、レシプロ同様、効果を期待できます。

ガスタービンやジェットエンジンには…自己責任でお使いください(笑)。

逆流防止弁がついているクルマ…モータロイ愛好者にとって問題になるものではないと思っていましたが、質問があったので改めて情報を収集して確認しました。
 逆流防止弁が装着されるようになったのは、車体構造が破壊されない程度の事故(=ひとり相撲の転覆等)の場面での燃料ダダ漏れ→引火炎上という事態を防ぐ目的のようです。 逆止能力重視のボール弁型でスタートし、コスト重視の単弁型が中心になったところでタール分で固着→給油時の吹き返しトラブルが頻発して、その対策に多弁化し、結果、二弁型や三弁型をタンク接続部にはめ込む方式と、給油口直下に金属単弁を設け給油ノズルで押し開けて給油する方式(MINIやプジョー等、主に輸入車)の二種にほぼ集約しているようです。
 結論的に、確実を期すならタンクの燃料ゲージ部分等を開けてタンクに直接投入することなのですが、そうするまでもなく、@開口部をモモタロイ15型が通過できない弁で、なおかつAそのためにモモタロイ15型が滞留する部位がゴムパイプ等磨耗粒子発生が期待できない部分になる、という場合以外は、特に問題にならないと考えます。
@弁の開口部…初期の単弁型(画像左側、右は固着対策の三弁型)とボール弁型(画像左側、右は格子のある二弁型)は開口部が大きいため、モモタロイ15型でも何度か給油を繰り返すうちに燃料と共に通過するはずです。二弁型三弁型は現物を見ないと確言できませんが、格子のある二弁型以外は、画像で見る限りモモタロイ15型が通過困難な開口部ではありません。モモタロイ10型は格子のある二弁型(画像右側)でも楽に通過できるサイズになっています。
 もし開口部にモモタロイが引っかかってしまったら…外れて落ち着くまでの間、給油時に少しスローペースで入れなくてはならなくなりますが、弁の固着と違ってそれなりの開口面積が残るためセルフ給油機の時間制限内に余裕で満タンにできるはずです。
A滞留部分の材質…弁を通過できないでその手前に滞留すると仮定して、そこが鉄パイプ部分であるなら、満タンから当分の間、燃料に浸かっているし、相当液面が下がるまで燃料の飛沫とパイプ内の残油に浸っていて、次の給油時に錫粒子が燃料と共にタンクに移動するため、タンク内にあるのに準じて作用すると考えられます。
 ハイエースの一部などのように相当長くしかも屈曲したゴムパイプで接続されている場合、モモタロイがそこに滞留してしまうとちょっと問題です。給油時に燃料に押され運転中の加速度で行き来するうち、鉄パイプ部に乗っている時や錫粒同士重なっている時にしか粒子が発生しないので、錫粒子の量はおそらく不足します。
車種と年式、リコール履歴等で@Aの状況がまるで異なるため、個々のクルマについてはご自身でディーラーに問い合わせるなどしてお調べください。
リンク先のハイエースとマツダ・ロードスターについては、逆止弁の位置や接続部のゴムパイプの長さには大いに問題あり!ですが、逆止弁自体が通過可能な形状のようで、類似商品の問題車種リストには載っていません(モモタロイ15型が通過できるという保証ではありませんが、モモタロイN型は楽に通過できるはずです)。 MINIのように、給油口直下に弁があって見えているなら、棒状のもので弁を押し開ければモモタロイ15型も通ります(画像が見つかりませんが、プジョー307等も同様だと思われます)。
ハイゼットの一部のように長い蛇腹のゴムパイプで接続されている場合、こればかりはお手上げです。N型も10型も15型もおそらく蛇腹に引っ掛かってにっちもさっちも行かなくなります。逆にこのタイプは容易に蛇腹部分を外せるので、リンクページのように蛇腹パイプと逆流防止弁を外して15型を直接投入すればスッキリ効くはずです。

樹脂製燃料タンク…プジョー307にお乗りの購入者の方から質問があったのですが、その後、国内産の新タイプ樹脂タンクの場合、タンク内面は外側と同じHDPE(高密度ポリエチレン)が使われていることが判明しました。カリフォルニア州の蒸散HC排出量規制に合わせて炭化水素蒸気の透過しない樹脂層等をサンドイッチした六層前後の積層構造になっています。内面のHDPEの硬度は不明ですが、構造材なので外側とほぼ同じ材質であると考えられます。  錫のモース硬度は1.5です。ポリエチレンの硬度は2〜3と幅がありますが、クルマの燃料タンクに使われるのは最も強度の高いタイプです。プジョー206で誤って燃料タンクにガレージジャッキを掛けて上げてしまってもビクともしなかった…という話まであります(大昔、スバル1000のオイルパンをそれで凹ませた経験があるので、驚きです)。
  (元祖)モータロイの方がタンクの樹脂より硬いと思い込んでいる306のオーナーも、他の同型車に比べ少ないオイル消費量にモータロイの効果を感じています(モデイファイ)。このプジョー306が燃料フィルターの詰まりを起こさないということは、タンク内面の樹脂は十分な硬度があり、入れてしまったモータロイは正常に磨耗して錫粒子を放出しているものと考えられます。
 それで最近の樹脂タンクからの類推とプジョー306でノートラブルである実績とから、樹脂製燃料タンクにモモタロイを入れても、少なくともタンクの側が削られて燃料フィルターが詰まったりタンクに穴が開いたりする心配は無いと判断できます。
 ただ、鉄板よりは硬度差が小さいため錫粒子の発生量が少なめになって、一万q走るうちに効いてくる…ということになりかねないため、使い始めの二千qくらいはモモタロイの一部を使ってタンク外で錫粒子を抽出して燃料に添加するようにした方がよいでしょう。
たとえば4気筒の場合、モモタロイ15型なら4単位4個のうち3個をタンク投入し、残りの1個を手摺り法(基本形)で錫粒子を抽出して燃料に添加する。モモタロイ10型なら、4単位8個のうち4個をタンク投入、残りの4個をシェイク法で錫粒子を抽出して燃料に添加する、というやり方で、効き始めを早めることができます。
 実走磨耗試験 2nd stageによれば、樹脂製燃料タンクにおいても亜鉛メッキ鋼板タンクとほとんど変わらない磨耗量を示しています。今まで、鋼板製タンクに比べて錫粒子発生量が不足すると思い込み、タンク外で錫粒子を作って添加することをご提案してきましたが、実走磨耗試験の様子から推測すれば、鋼板製タンクのクルマと同じ感覚でN型を入れておけば普通に効いてくると思われます。
 もっとも、正直なところ、クロスハッチが健在なクルマでは劇的な効果は体験できないはずなので、そんなにイライラしないでタンクに入れて忘れておくのが最も優れた使い方だと思うのですが。

アルミ燃料タンク…最近の大型車の一部に、アルミ合金製の燃料タンクを搭載しているものがあるようです。これは未だ情報が不足で検証できていません。

モータロイはナマリ?…ネットの情報に見られる明らかな間違いの一つとして「『モータロイ』は『鉛』」というものがあります。ガソリンが無鉛化されてゆく時期に、有鉛仕様車の無鉛対策(バルブリセッション防止効果)を強調して売ったことに因る誤解のようです。
 しかし錫(Sn)と鉛(Pb)とは似た色の重金属ながら全く別の元素です。検索すると「釣りの錘で代用した」とか「棒ハンダを溶かしてモータロイを自作した」とか、笑えない話もヒットしますが、決して真似しないでください。
 鉛は日常の接触では安全ですが、金属のままでも体内にとどまると猛毒に変化します。銃弾に当たって一命をとりとめても、体内に鉛の破片が残ったままだといずれ鉛中毒で死ぬことになるため摘出しなくてはならないのです。
一方錫は、鉄と共に身近な重金属の中では珍しく、食器や調理器具に問題なく使える金属です。 錫の摂取経路と毒性?, 缶詰から溶けだす錫?
 スズと鉛の区別がつかないような人はモータロイには手を出さないでください。

環境ホルモン疑惑…モータロイは「環境問題」から製造中止されたとか、さらには「燃焼室で有機スズ化合物に変化し、それが内分泌攪乱物質(環境ホルモン)として作用する」だという情報がありますが、その真実性には相当な疑問を感じます。
 有機スズ化合物の環境問題は、船底塗料や漁網の「防汚材(=水棲生物の付着を防ぐ毒)」として長年、大量に生態系に放出されてきたものが、魚介類を経て人間の口に入る、というものです。 巻き貝が生殖不能に 身近な環境ホルモンとは逆に、雌を雄化させる作用が有機スズの特徴のようです。

 モータロイが環境に有害であるとするためには、(1)モータロイは燃焼室で有害な物質に変化する、(2)それは本当に有害な量である、という二点の成立が必要条件であり、それが成立しないなら「地球温暖化を防止するために、みんなで1分間息を止めて二酸化炭素の排出を減らそう!」というような、笑い話になってしまいます。
(1)金属錫の微粒子が燃焼室や触媒装置の環境でTBTO(酸化トリブチルスズ)、TBT(トリブチルスズ)、TPT(トリフェニルスズ)等、有毒な有機スズ化合物に変化する可能性は現実にはありません。
 ある程度以上複雑な化合物は、熱も触媒も駆使して特定の原子や官能基を付けたり切り離したり置換したり、何段階もの化学反応を積み重ねなくては作れません。
 たとえば、毒ガスであるサリン分子の構成要素はブタンと酸素を各1分子+フッ素とリンを各1原子で揃います。どれも身近にある元素ですが、その割合で混ぜたものをどんなに加熱しても火花を飛ばしてみても、サリン分子ができあがることはありません(そんなことで作れるならみんなオウムに殺されています)。同じように、燃焼室には炭素と水素、酸素と錫が同時に存在していて一瞬高温高圧になるとはいっても、それだけでTBTOなどが生成されることはありません。
(2)燃料タンク内での磨耗のペースを考えればエンジンが排出する錫は極めて微量なので、仮にその全部が毒に変化しても排ガス中のCOの総量にさえ遠く及びません。

 つまり、モータロイに関して(1)(2)共に成立しないことは明らかであり、燃料タンクから排気口まで、モータロイ自身やそれが変化してできる物質が環境に有害であると断定する合理的な根拠は今のところ存在しません。
 本当のところは、クルマの一生使えて儲からないため製造元が倒産したことが、流通段階で話が大きくなり、TBTO等の環境問題にこじつけられた、というのが真相ではないかと思っています。
 モータロイが有害であると判明したのならこっそり廃盤にすることなど許されず、回収命令が出て米国のあちこちで廃車の燃料タンクをひっくり返す騒ぎになると共に、「ウチの娘が性同一性障害になったのはスクールバスがモータロイを使っていたことが原因だから性転換手術の費用と慰謝料を支払え!」というような訴訟が起こされているはずですが、そのような話は聞こえてきません。

油上の帝国…ちょっと脱線ご容赦…米国の経済封鎖によって日本は日米開戦を決意し真珠湾攻撃によって太平洋戦争に突入するのですが、経済封鎖の焦点は次の二点でした。
 @(米国産)石油の禁輸、そしてA(米国産)先進工作機械の禁輸です。
 どちらも見かけ上、海外資産凍結等と併せて宣戦布告させることが目的のようですが、実際にはその先の戦争の期間に日米双方が実戦投入するはずの次世代高出力エンジンによる航空決戦に焦点を合わせていて、その局面で米国の優位を確実なものとするための布石でした。
 特に@の実質は後に「ペンゾイル」というブランドになるペンシルバニア産原油の禁輸でした。それはいわゆる「パラフィン系炭化水素」を主成分とする原油で、ガソリンの基材としては(ノーマル・オクタンばかりだから)オクタン価が最低で大量に4エチル鉛をぶち込まなくては実用に耐えないものですが、逆に潤滑油の基材としては世界最高のもので、枝分かれもベンゼン核も無い細長い分子であるために金属との分子間引力が強く、東南アジア原油から採ったベースオイルが翼賛ギブアップする高温・高圧下でも油膜が切れない高品質のベースオイルを分溜できました。現代と違って潤滑油の限界性能はほとんどベースオイルが決めていた当時、決戦兵器となる次世代二千馬力級ハイ・メカエンジンが要求する潤滑能力に応えられる世界唯一の潤滑油基材だったのです。しかしその供給を絶たれることの意味を軍国日本は理解していませんでした。
 航空産業どころか自動車産業も石油化学工業も未熟で、工業規格さえ制定しないまま戦争に突入した日本は、単に燃料としての石油の確保に終始して次世代潤滑油の研究開発を怠ったため、早くから三式戦闘機飛燕のハイ・メカ液冷エンジン・ハ40(和製DB601)が必要とする潤滑油を供給できず、結果多くの陸軍パイロットを無用なエンジントラブルで犬死にさせました。
それでも学習できなかったため、ハイ・メカ救国エンジン・ハ45(誉)を駆って空に昇った陸海軍のさらに多くのパイロットたちをエンジントラブルによる無念の憤死に突き落とし、本土上空に米軍機の跳梁跋扈を許してしまいました。
 とうとう軍部も折れて三式戦闘機を旧世代エンジン・ハ112-U(金星62型)に換装改造した五式戦闘機が涙ぐましい反撃を始めたものの時既に遅く、その生産拠点も空襲で粉砕され、原爆投下とソ連参戦により無条件降伏を余儀なくされたのでした。それは後に昭和天皇が評し給うたように「余りに精神に重きを置きすぎ、科学をないがしろにした結果」、即ち、決戦兵器の分野において「仏つくって魂入れず」を頑に実践した結果でした。
 さてさて、誤解の無いように! 私は決して主戦論者ではありません。単にエンジニアのはしくれとして、油膜は限界状況のエンジン(とそれを駆る人間)の命運を左右することを言いたいのです。
 ハ40(DB601)の問題は主に、クランクジャーナルのローラーベアリングのローラー端面の面取り加工が、自動工作機械が無いため手作業によらざるをえず、整形しきれなかった部分から高負荷時にカジリが始まって空戦中の焼き付きやクランク折損に発展したと説明されるものですが、荒い仕上げのローラーを焼き付かせずに馴染ませてしまえる性能の潤滑油が使われてさえいれば、パイロットの多くは生きて帰れたはずなのです(ハ40のピストン・コンロッドとクランクジャーナルベアリング…大端はプレーンベアリングでした…下から二番目の画像)。
 実際に前線のハ115(栄21型)で習慣化していた、規定時間使ったオイルを布で濾して延長使用する習慣をハ45(誉)では厳禁し、新油の使用を徹底しただけで空戦中のエンジン焼き付きを相当程度予防できた部隊(飛行第47戦隊)や、満州の補給廠に残っていた米国製潤滑油(=ペンゾイル)を使用して稼働率100%を誇った部隊(飛行第104戦隊)の話が伝えられています。
 もちろん、点火系の絶縁材料の品質その他、ハイ・メカ世代エンジンのトラブル原因は数多く考えられているのですが、単なる不調にとどまらない運転中の突然死は潤滑の破綻が鍵になっています。
 その証拠に戦後、米軍が持ち帰ってテストした旧日本陸・海軍の軍用機はどれも驚異的な高性能を発揮して米軍関係者を震え上がらせたのですが、それは単に良いガソリン(オクタン価140)を使ったことではなく、フルブースト連続運転を余裕をもって支える米軍の潤滑油を使ったことに依ります(点火系も米軍仕様でしたが)。
 捨て鉢の軍部の期待通り本土決戦が実現していれば、小柄ゆえ陸軍戦車兵志願であった私の父(昭和4年生れ)は、実際には戦車に載せてもらえず爆薬を背負って米軍戦車の履帯めがけて突撃するよう命じられ、作戦の成否に依らず背負った爆薬で上半身を吹き飛ばされた無残な死骸になって祖国の草辺に埋もれていたはずです。…米国の属国としての戦後日本の平和と繁栄を感謝すると共に、油膜に殉じた敵味方すべての戦士諸兄に、衷心より謹んで、合掌。

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